スキルマップの作り方|担当できる仕事と一人でできる仕事を分ける記入例

スキルマップを作るときに大切なのは、「担当したことがある」と「一人でできる」を分けることです。過去に1回担当しただけでは、支援なしで通常ケースを処理できるとは限りません。

この記事では、架空の「業務サポートチーム」を例に、6つの業務と4人の現在地を1枚にまとめます。誰が優秀かを比べる表ではなく、各業務を一人でできる人が何人いるか、どこにバックアップやOJTが必要かを見るためのスキルマップです。

完成例|4人×6業務のスキルマップ

次のチーム名、人物、数値はすべて架空です。縦軸に業務、横軸にメンバーを置き、交点へ現在の習熟度を記入します。

業務サポートチームの完成スキルマップ(架空例)
業務 佐藤 鈴木 高橋 田中
週次進捗報告 3 2 1 2
会議アジェンダ作成 2 2 1 3
議事録作成 3 1 2 2
課題管理表更新 2 3 1 2
備品購入申請 1 2 3 2
業務手順書更新 2 1 2 3
  • 0:未経験・未実施
  • 1:説明や支援があれば実施できる
  • 2:通常ケースなら一人で実施できる
  • 3:例外時の判断・相談先も理解し、他の人へ基本を説明できる

この4段階は、小チームで仕事を整理するための一例です。公的な評価尺度や人事評価制度ではなく、唯一正しい分け方でもありません。自分たちの業務に合わせて、判断できる表現へ調整してください。

完成例を業務ごとに見ると、6業務すべてでレベル2以上が3人います。たとえば議事録作成は佐藤・高橋・田中、業務手順書更新は佐藤・高橋・田中がレベル2以上です。この表には「一人でできる人が1人だけ」の業務はありませんが、レベル1の人がどの業務を練習候補にできるかは確認できます。

スキルマップとは

スキルマップとは、チームにある複数の業務と、各メンバーがその業務をどこまで実施できるかを一覧にした表です。この記事では能力や性格を広く評価せず、具体的な仕事を支援なしでどこまで実施できるかに範囲を絞ります。

佐藤さんが議事録を過去に1回担当したことがあっても、毎回支援を受けていたなら、すぐにレベル2とはしません。経験回数だけで決めず、「現在、通常ケースを一人で実施できるか」を見ます。本人との確認に加え、実際の成果物やOJTでの実施状況を参考にすると、印象だけの記入を避けやすくなります。

また、レベル0は「能力が低い人」という意味ではありません。その業務をまだ経験していない、または担当する必要がなかった可能性を示します。数値を個人の優劣や査定へそのまま結び付けないでください。

スキルマップを作る5ステップ

1.業務を一覧にする

最初に、チーム内で誰かが実施している仕事を並べます。仕事が整理されていない場合は、先に業務棚卸しのやり方で業務名、頻度、担当などを一覧にしてください。

今回の流れは「業務棚卸し → 対象業務を選ぶ → スキルマップ → 不足箇所を確認 → OJT計画」です。最初から全業務を載せず、バックアップや育成の状況を確認したい業務に絞ると作りやすくなります。

2.業務の粒度をそろえる

「事務」「設計」「管理」のような大きな言葉では、何ができればレベル2なのか判断できません。「議事録作成」「課題管理表更新」「月次報告作成」のように、実際に一つの仕事として担当できる単位へ分けます。

一方、操作一つずつに分けて100項目になると更新しにくくなります。開始と完了が分かり、担当を渡せる単位を目安にしてください。詳しい手順まで必要な業務は、別途業務手順書にまとめます。

3.習熟度を決める

0から3までの意味を、記入前にチーム内でそろえます。「知っている」「得意」のような印象ではなく、支援の有無と通常ケース・例外時の行動で区切るのがポイントです。

4.メンバーごとに記入する

業務とメンバーの交点に現在のレベルを記入します。自己申告だけで決める必要はありません。本人との確認や、次のような事実を参考にします。

  • 実際に通常ケースを一人で実施した
  • 説明や確認を受けながら実施した
  • OJTの実務または練習で確認した

「なんとなくできそう」という印象だけで更新すると、人によって基準が変わります。記録根拠を短く残せる場合は、実施日や確認した業務結果も別欄に控えると見直しやすくなります。

5.不足箇所を確認する

メンバーごとの合計点や順位ではなく、業務の行を横に見ます。確認するのは、主担当になれる人、バックアップできる人、支援を受けて練習中の人です。

レベル2以上が少ない業務は、担当変更や休暇のときに代替しにくい可能性があります。ただし、人数だけで育成の要否は決まりません。業務頻度、重要度、外部委託などの代替手段も合わせて確認します。

今回使う4段階の見方

レベル 状態 記入時に確認すること
0 未経験・未実施 まだ担当していない、または実施記録がない
1 支援があれば実施できる 説明、見本、途中確認などがあれば進められる
2 通常ケースを一人で実施できる 通常の条件なら、支援なしで開始から完了まで進められる
3 例外時の相談先を理解し、基本を説明できる 自分だけで全例外を解決するのではなく、止める場面や相談先が分かる

レベル3は「何でも一人で判断できる」という意味ではありません。例外を抱え込まず、確認すべき条件と相談先を理解している状態を含みます。また、すべての業務で全員をレベル3にする必要もありません。

一人でできる人が少ない業務を確認する

表を作ったら、各業務についてレベル2以上の人数を数えます。完成例では、次のように確認できます。

  • 議事録作成:レベル2以上が3人
  • 課題管理表更新:レベル2以上が3人
  • 業務手順書更新:レベル2以上が3人

仮に、ある業務が「3/0/0/0」なら、その時点では一人に対応が集中し、バックアップ不在の可能性があります。これは属人化候補を確認する合図ですが、1人しかいないから即問題、必ず改善と断定はできません。年1回だけの業務か、停止時の影響が大きい業務か、他部署が代行できるかで判断は変わります。

バックアップ要員とOJT候補を確認する

一つの業務について、レベル2以上の主担当・バックアップ候補と、レベル1の練習中の人を確認します。完成例の「課題管理表更新」は、鈴木が3、佐藤と田中が2、高橋が1です。高橋さんに今後その業務を担当する予定や必要性があるなら、レベル2を目指すOJT候補にできます。

ただし、数字だけで育成対象を決めないでください。本人の担当予定、業務頻度、重要度、練習機会を確認し、必要な業務から選びます。すべての人をすべての業務に対応できる状態にすることが目的ではありません。

スキルマップで不足箇所を見つけた後は、OJT計画書の作り方を使い、一つの業務について教える内容、練習、通常ケースを一人でできる状態までを具体化します。スキルマップは複数業務×複数メンバーの全体を見る表、OJT計画書は選んだ一業務の習得過程を設計する文書です。

業務棚卸し・RACI・OJT計画との違い

道具 主に整理すること スキルマップとの接続
業務棚卸し チームや自分にどんな業務があるか スキルマップへ載せる業務を選ぶ入口
スキルマップ 複数業務を各メンバーがどこまで実施できるか バックアップ不足やOJT候補を見つける
RACI 誰が実行し、最終責任を持ち、相談・共有に関わるか 担当・責任と、実施できる状態を分けて確認する
OJT計画書 一つの業務を教え、練習し、一人でできるまでの進め方 スキルマップで選んだ不足業務の育成を設計する

RACIで実行担当のRになっていることと、その人が単独で通常ケースを処理できることは同じではありません。RACIは「誰が責任を持つか」、スキルマップは「誰がどこまで実施できるか」を確認します。

バックアップ不足を確認し、実際に担当交代を進める段階では、業務引き継ぎ表で現在地、残件、次の行動、資料の場所を具体的に渡します。

コピーして使えるスキルマップひな形

次の表をコピーし、業務名とメンバー名を置き換えてください。最初は確認したい業務だけで小さく作ります。

業務 メンバーA メンバーB メンバーC メンバーD
業務1        
業務2        
業務3        

レベル
0 = 未経験・未実施
1 = 説明や支援があれば実施できる
2 = 通常ケースなら一人で実施できる
3 = 例外時の判断・相談先も理解し、他の人へ基本を説明できる

必要なら表の外に「確認日」「根拠」「次に確認すること」を追加します。この記事ではExcelファイルの配布は行わず、まずこの簡易表で仕事と判断基準をそろえることを優先します。

更新するタイミング

スキルマップは作成時点の状態を示すため、状況が変わったときに見直します。毎月必ず更新する必要はありません。たとえば、次のタイミングが候補です。

  • 担当変更があったとき
  • OJTが完了し、実際の業務結果を確認したとき
  • 新しい業務が増えたとき
  • 手順やシステムが変わり、業務内容が変わったとき

変化が少ないチームでは、定期的な見直し日を決める方法もあります。レベルを上げるときは、「一人で実施した」「支援ありで実施した」「OJTで確認した」などの事実を基にし、日付が来ただけで自動的に変更しないようにします。

まとめ

スキルマップは、業務を縦軸、メンバーを横軸に置き、各業務をどこまで実施できるかを記入する表です。担当経験の有無だけでなく、通常ケースを支援なしで一人で実施できるかを区別してください。

まず業務を担当可能な単位へそろえ、0から3の基準を決め、業務ごとにレベル2以上の人数を確認します。バックアップ不足の可能性や練習候補が見つかったら、業務の重要度と本人の担当予定を確認したうえで、必要なOJTや引き継ぎへつなげましょう。

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