ChatGPTに作業メモを渡すと、箇条書きを手順・注意点・確認事項に整理した下書きを作れます。ただし、文章が整っていても、元メモにないルールが補われたり、元メモの一項目が抜けたりする可能性があります。
ChatGPTの出力をそのまま業務手順書にせず、必ず元メモと照合してから人が完成させることが大切です。この記事では、架空の「社内備品の貸出手続き」を例に、短いメモから下書きを作り、追加・欠落・断定化を確認する方法を説明します。
なお、顧客情報や社外秘情報などを入力してよいかは、ChatGPTの設定だけでは決まりません。利用する前に、勤務先の生成AI利用ルール、契約、利用環境を確認してください。
完成例|作業メモから手順書を作る流れ
今回の流れは次のとおりです。
- 元になる作業メモを用意する
- 元メモにない内容を補わないよう条件を付けて、ChatGPTへ入力する
- 手順・注意点・確認事項に分かれた下書きを得る
- 下書きを元メモと一項目ずつ照合する
- 追加、欠落、数字の変更、断定化を人が修正する
- 社内の正式なルールも確認して、完成手順書にする
元メモ → ChatGPT下書き → 元メモと照合 → 人が修正 → 完成手順書という順番です。「ChatGPT下書き」の段階で完成扱いにはしません。
手順書そのものをゼロから設計する方法や、開始条件・判断・例外・完了条件まで詳しくそろえる方法は、業務手順書の作り方で説明しています。本記事は、その前後にChatGPTを下書き整理役として使う方法に絞ります。
今回使う作業メモ
以下は、説明用に作った完全な架空メモです。実在する会社、部署、担当者、運用とは関係ありません。
ChatGPTへ渡す元情報
- 備品を借りたい人から依頼を受ける
- 貸出台帳を確認
- 貸出中なら返却予定日を伝える
- 空いていれば利用者名と貸出日を書く
- 返却予定日は原則1週間後
- 返却されたら返却日を書く
- 破損があったら管理担当へ連絡
- 台帳更新を忘れない
このメモだけでも大まかな流れは分かりますが、「原則1週間後」の例外条件、管理担当者が不在の場合、破損時に何を記録するかは書かれていません。ChatGPTに答えを作らせず、不足情報として残す必要があります。
ChatGPTへ渡すプロンプト
ChatGPTの入力欄へ、次のプロンプトと作業メモを貼り付けます。巨大な指示にせず、元情報を変えないための条件と出力形式を明示します。
以下の作業メモを、業務手順書の下書きに整理してください。 【ルール】 ・元メモに書かれていないルール・期限・担当者・承認条件は推測して追加しない ・作業順に番号を付ける ・注意点を手順とは分ける ・判断が必要な箇所は「確認事項」として分ける ・情報が不足している箇所は「要確認」または「元メモに記載なし」とする ・元メモの意味、数字、条件を変えない 【出力形式】 1. 目的 2. 手順 3. 注意点 4. 確認事項 【作業メモ】 (ここにメモを貼る)
「書かれていない内容は推測しない」と指示しても、誤った補完を完全に防げるわけではありません。出力後の照合は省略しないでください。
ChatGPTで整理した手順書の下書き例
上の架空メモを整理すると、次のような下書きになります。これはChatGPTの実行結果ではなく、元メモとプロンプトを使って人が整合性を確認した説明用例です。
1.目的
社内備品の貸出状況と返却状況を貸出台帳へ記録する。
2.手順
- 備品を借りたい利用者から貸出依頼を受ける。
- 貸出台帳で、対象備品が貸出中かどうかを確認する。
- 貸出中の場合は、貸出台帳にある返却予定日を利用者へ伝える。
- 貸出可能な場合は、利用者名と貸出日を貸出台帳へ記録する。
- 返却予定日を「原則1週間後」として記録する。例外条件は要確認。
- 備品が返却されたら、貸出台帳へ返却日を記録する。
- 返却時に破損があった場合は、管理担当へ連絡する。
3.注意点
- 貸出時と返却時の台帳更新を忘れない。
- 「原則1週間後」を例外のない上限期限へ言い換えない。
4.確認事項
- 「原則1週間後」の例外条件:元メモに記載なし。要確認。
- 管理担当者が不在の場合の連絡先・対応:元メモに記載なし。要確認。
- 破損時に貸出台帳へ記録する内容:元メモに記載なし。要確認。
ここでは「台帳を更新する」を実行順のある手順として残し、「台帳更新を忘れない」を注意点へ分けました。また、「原則」が付いている以上、「返却期限は必ず1週間」とは確定していません。下書きでも「原則1週間後。例外条件は要確認」とします。
元メモと照合する7項目
ChatGPTの出力を得たら、見た目を整える前に次の7項目を確認します。
- 元メモの項目が抜けていないか
8項目を一つずつ下書きの該当箇所と対応させます。 - 元メモにないルールが増えていないか
一般的にはありそうなルールでも、この業務の根拠がなければ採用しません。 - 数字・期限が変わっていないか
「原則1週間後」が「7日以内」「最長7日」などへ変わっていないか確認します。 - 担当者や承認者が追加されていないか
元メモにない部長、総務責任者、承認者などを確定させないようにします。 - 条件付きの表現が断定へ変わっていないか
「原則」「場合による」「確認中」を、例外のない決まりへ変えないようにします。 - 注意点が手順へ混ざっていないか
何をするかは手順、作業中に気をつけることは注意点へ分けます。 - 不明事項が要確認として残っているか
空欄をもっともらしい回答で埋めず、確認する相手や資料が決まるまで要確認にします。
OpenAIの公式案内でも、重要な数字・日付・主張、情報の欠落、根拠のない仮定を確認し、最初の出力を見直せる下書きとして扱うことが案内されています。詳しくはChatGPTの利用ガイドとプロンプトの公式ガイドを参照してください。
勝手な補完を見つける
ChatGPTが必ず次の誤りを出すわけではありません。ただし、下書きにこうした推測補完が入っていないかを確認します。
- 「貸出には部長承認が必要」:承認者は元メモにないため、採用しません。
- 「貸出は最長7日まで」:「原則1週間後」を例外のない上限へ変えているため、採用しません。
- 「返却前日に自動通知する」:通知の仕組みも実施ルールも元メモにないため、採用しません。
正しそうに見えるかではなく、元メモまたは正式な現行ルールに根拠があるかで判断します。根拠がなければ削除するか、「要確認」へ戻します。
抜け漏れを確認する
AI出力で注意したいのは、誤った追加だけではありません。元情報の一部が抜けることもあります。
たとえば、元メモに「破損があったら管理担当へ連絡」とあるのに、下書きからこの項目が消えていれば修正対象です。貸出と返却の流れだけが読みやすく並んでいても、破損時の連絡が抜けたままでは元メモを保持できていません。
照合するときは、完成文を眺めるだけでなく、元メモの各行に対して「下書きのどこへ入ったか」を確認します。対応先がなければ追記し、複数の意味が一文にまとめられて分かりにくい場合は分けます。
不明事項は「要確認」のまま残す
情報が不足している状態で、無理に完成文へ見せる必要はありません。不足を見える形にすることも、ChatGPTでメモを整理する価値の一つです。
今回なら、次の項目は元メモだけでは回答できません。
- 「原則1週間後」の例外は、誰がどの条件で決めるのか
- 管理担当者が不在の場合は、誰へ連絡するのか
- 破損した場合、状態や利用者名などをどこまで記録するのか
この段階では答えを作らず、「要確認」と残します。その後、社内規程、正式な台帳、業務責任者などへ確認し、根拠が得られた内容だけを完成版へ反映します。
照合後に人が整えた完成手順書
元メモとの照合を終えた時点で、今回の情報から確定できる完成例は次の範囲です。
目的
社内備品の貸出状況と返却状況を貸出台帳へ記録する。
手順
- 利用者から備品の貸出依頼を受ける。
- 貸出台帳で対象備品の貸出状況を確認する。
- 貸出中の場合は、台帳にある返却予定日を利用者へ伝える。
- 貸出可能な場合は、利用者名と貸出日を台帳へ記録する。
- 返却予定日は原則1週間後として記録する。例外に該当するか不明な場合は確定せず、正式なルールを確認する。
- 返却されたら、返却日を台帳へ記録する。
- 破損があった場合は管理担当へ連絡する。
注意点
- 貸出時と返却時の台帳更新を忘れない。
- 「原則1週間後」を例外のない期限として扱わない。
確認事項
- 返却予定日の例外条件:要確認
- 管理担当者が不在の場合の連絡方法:要確認
- 破損時に記録する内容:要確認
確認事項が残っているため、これは社内配布できる最終確定版ではありません。人が正式なルールを確認し、必要箇所へ反映して初めて、その職場の完成手順書になります。会社によっては、対象者、必要物、使用システム、改訂履歴などの項目も必要です。
機密情報を入力する前に確認する
作業メモを貼り付ける前に、次の情報が含まれていないか確認してください。
- 顧客情報
- 個人情報
- 契約情報
- 未公開情報
- 社外秘情報
- ID、パスワード、APIキーなどのアカウント情報
個人向けChatGPTにはData Controlsなどの設定があり、管理対象のBusiness/Enterprise/Edu環境ではデータ取扱いや管理者設定が異なり得ます。しかし、サービス上の設定と、勤務先が業務情報の入力を許可しているかどうかは別の問題です。会社の機密情報を入力してよいかは、会社のルール、契約、許可された利用環境に従ってください。設定を変更しただけで、会社情報を入力してよいことにはなりません。
利用が認められている場合でも、必要に応じて具体情報を一般化します。たとえば「株式会社○○」を「取引先A」、「山田太郎」を「担当者A」へ置き換えます。最初は完全な架空データで試す方法もあります。ただし、匿名化すれば必ず入力してよいわけではありません。元の情報と組み合わせて個人や案件を特定できないかも含め、会社のルールを優先します。
OpenAIの管理対象環境に関する案内では、Business/Enterprise/Eduのデータ保護や管理設定が説明されています。利用環境ごとの差を確認する場合は、ChatGPT Workのセキュリティ案内も参照してください。
通常の業務手順書・更新作業との使い分け
今回の方法は、手元の作業メモをChatGPTで「手順・注意点・確認事項」に整理し、新しい手順書の下書きを作る場面向けです。
- 業務手順書の作り方:人が業務内容を整理し、開始条件、判断、例外、記録、完了条件まで手順書そのものを作る基本記事です。
- 業務マニュアルの更新方法:すでに正式なマニュアルがあり、変更点、旧版、周知、更新後確認を管理する場合に使います。
- ChatGPTで議事録を作る方法:会議メモを決定事項、未決事項、次の行動へ整理し、元メモと照合する方法です。
すでに正式手順書や最新版がある場合は、古いメモだけから新しい手順書を作り直さないでください。正式な現行手順を基準にし、変更が必要なら更新作業として扱います。今回と議事録の記事は、元情報をChatGPTで構造化し、人が追加・欠落・断定化を照合する点が共通していますが、整理する項目は異なります。
まとめ
ChatGPTは、整理されていない作業メモを、目的・手順・注意点・確認事項に分けた下書きへ整える用途に使えます。プロンプトでは、元メモにないルール・期限・担当者・承認条件を推測で追加せず、不足は「要確認」と残すよう指定します。
出力後は、元メモの抜け、元メモ外の追加、数字や期限の変更、担当者の追加、「原則」の断定化を一項目ずつ確認してください。ChatGPT出力は完成手順書ではありません。元メモとの照合と、正式な社内ルールの確認を経て、人が修正したものを完成版にします。
