部署ごとの平均処理時間から「全案件の1件あたり平均」を出すときは、各部署の合計処理時間を足し、対象件数の合計で割ります。 部署別の平均を足して部署数で割ると、件数の違いが反映されません。
平均と件数だけがある場合は、「平均×その平均に使った件数」で合計時間を求められます。ただし、丸めた平均から求めた合計は概算です。集計単位や計測方法が違う、案件が重複する、件数が分からない場合は、そのまま合算しません。
この記事は、小チームの担当者が部署別の集計を受け取り、月次報告へ正しい値と確認事項を残すための手順です。計算と報告の例はすべて架空です。Excelの操作手順や、仕事が速くなった原因の判定を目的とするものではありません。
例:20件と80件の平均をまとめる
次の架空例では、10月1日〜5日に完了した申請を対象にしています。申請1件の処理時間は、担当者が申請を処理した実作業時間の合計で、待ち時間は含めないという設定です。二つの部署は別の申請を処理しており、重複はありません。平均は丸め前の値です。
| 部署 | 平均処理時間 | 平均に使った完了件数 | 合計処理時間 |
|---|---|---|---|
| A | 10分/件 | 20件 | 200分 |
| B | 30分/件 | 80件 | 2,400分 |
| 全体 | 26分/件 | 100件 | 2,600分 |
全体平均は (200+2,400)÷(20+80)=26分/件 です。
(10+30)÷2=20分/件 は、二つの部署の平均値を同じ重さで扱った値です。「100件全体の1件あたり平均」としては使えません。部署を同じ重みで比較する目的なら別の指標として扱えますが、案件全体の平均とは表題を分けます。
平均に、その平均を計算した対象数で重みを付ける方法は加重平均です。ここでの重みは部署の重要度や在籍人数ではなく、時間を計測して平均に含めた申請件数です。加重平均の基本的な考え方は、京都府の解説「加重平均」でも確認できます。
計算する前に、集計の単位をそろえる
平均と件数がそろっていても、次の条件を確認します。
| 確認項目 | 合算できる例 | 先に確認する例 |
|---|---|---|
| 対象期間・対象業務 | 同じ5日間に完了した同種の申請 | Aは1週間、Bは1か月。月次の全体平均に含める範囲が違う |
| 1件の単位 | 1申請を1件として計測 | Aは申請数、Bはその申請の確認作業回数 |
| 時間の定義 | 両部署とも実作業時間 | Aは実作業、Bは受付から完了までの待ち時間込み |
| 平均の分母 | 平均に使った計測済み申請件数 | 平均は計測済み50件、添えた件数は全受付80件 |
| 重複 | 案件IDごとに一度だけ集計 | 同じ申請が両部署の件数へ含まれる |
| 元の数値 | 合計時間と件数、または丸め前の平均と件数 | 整数へ丸めた平均しかない |
二つの部署が同じ申請にそれぞれ作業した場合は、何を知りたいかを先に決めます。「申請1件の全工程の実作業時間」なら、各工程の時間を申請ごとに足して、重複しない申請数で割る集計が必要です。部署の件数を単に足すと、「作業1回あたり」の平均になることがあります。
部署ごとの対象申請が同じか、一部だけ重なるかも確認します。必要な工程の時間が計測されていなければ、記録済みの時間だけで「全工程の平均」を確定しません。
一方、両部署が同じ時間記録を二重に取り込んだなら、時間の合計も二重になります。作業の分担と記録の二重取込みは別の問題として確認してください。
元データの状態ごとに、進め方を決める
合計処理時間と件数がある
同じ定義の合計時間を足し、対応する件数を足して割ります。この方法なら、表示用に丸めた部署別平均を再利用する必要はありません。
計算式は 全体平均=対象の合計処理時間÷対象件数 です。分子と分母は同じ対象に対応させます。
平均と件数だけがある
各行の平均が算術平均であり、件数がその平均の分母なら、全体平均=各行の「平均×件数」の合計÷件数の合計 とします。部署別の中央値を同じ式へ入れても、全体の中央値にはなりません。
平均が整数に丸められていると、「平均×件数」は正確な合計時間ではありません。概算として示すか、丸め前の平均または元の合計時間を依頼します。丸め方が不明なら、誤差の上限も勝手に決めません。
件数が不明、未計測、または0件
件数が不明な部署へ、他部署と同じ件数を補って計算しません。全体平均は未確定とし、確認済み範囲の値を示すなら、その範囲を表題に書きます。
実際に対象が0件なら、その部署の平均は「対象0件のため算出できない」です。0分の案件があったわけではありません。ほかの部署に対象があり、全部署の範囲を確認できていれば、それらの時間と件数で全体平均を計算できます。全部署が0件なら全体平均も算出できません。
「0件」と「計測できなかった」は違います。未計測の申請を除いた場合、計算できるのは計測済み申請の平均です。全申請の平均へ名前を変えないでください。
月次報告へ残す完成例と空欄様式
最初の架空例を報告すると、次のようになります。
10月1日〜5日に完了した申請100件の平均実作業時間は26分/件でした。A部署20件・計200分、B部署80件・計2,400分を合算し、2,600分÷100件で算出しました。待ち時間は含めず、同じ申請の重複はありません。今回は現状値の集計であり、前期との比較や改善施策への帰属は判断していません。
次の様式を、自分のデータに合わせて使えます。確認していない項目は「未確認」と記入します。
件名:[期間]の[対象業務]平均処理時間
知りたい値:[申請1件/作業1回など]あたりの平均
対象:[対象部署・完了条件・対象期間]
時間の定義:[実作業/待ち時間込みなど]
元データ:[部署別の合計時間と件数/平均と件数]
確認状況:[重複・未計測・件数0・丸めの有無]
計算:[対応する合計時間]÷[対応する件数]
結果:[数値と単位/対象0件/全体未確定]
範囲:[全体/確認できた部署・計測済み対象だけ]
未確認事項:[内容・確認先・確認期限]
件数が分からないときの依頼文は、例えば次のように書きます。
B部署の平均30分について、この平均に含めた申請件数と合計実作業時間を確認させてください。受付件数ではなく、時間を計測して平均に使った件数が必要です。待ち時間・重複・未計測の扱いもお願いします。確認まではA部署のみの値を記載し、全体平均は未確定とします。
確認期限は、実際に合意した日時を追記してください。
全体平均が下がっても、各部署が速くなったとは限らない
次の架空例では、部署ごとの平均がどちらも変わっていません。
| 期間 | A:10分/件 | B:30分/件 | 全体平均 |
|---|---|---|---|
| 前期 | 20件・200分 | 80件・2,400分 | 26分/件 |
| 後期 | 80件・800分 | 20件・600分 | 14分/件 |
全体は26分から14分へ下がりましたが、この例の変化は処理件数の構成によって生じています。「各部署の作業が速くなった」「施策で12分短縮できた」とは書けません。
報告には、「部署別平均は不変。全体平均の低下は、この集計ではA部署の件数比率が増えたことによる」と残せます。実データでは、業務の難易度や計測方法の変更なども確認します。観測と効果の判断を分けて文書へまとめるときは、施策の効果検証レポートの書き方が次の手順になります。
平均は対象全体を一つにまとめた値です。特定の案件の長い待ち時間や個別の負荷まで、この平均だけで説明できるわけではありません。

