KGIは最終的な成果の達成度を測る指標、KPIはその成果につながる重要な過程や業績を測る指標です。設定するときは、KGI → 成果を生む構造 → KPIの順で考えます。先に測りやすい数字を選ぶと、数字は達成したのに成果が出ない、ということが起こります。
この記事では「問い合わせからの月間受注20件」を例に、何を測り、どう目標値を決め、未達のときに何を確認するかまで説明します。
KPIとKGIとは
KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標)は、目指す成果に到達したかを判断するものさしです。KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)は、成果につながる重要な要因の状態を確認し、途中で行動を見直すために使います。
| 比較項目 | KGI | KPI |
|---|---|---|
| 確認すること | 最終成果を達成したか | 成果につながる過程が機能しているか |
| 営業の例 | 問い合わせ経由の受注件数 | 有効商談数、提案数、提案から受注への転換率 |
| 目標値の例 | 月間20件 | 月間40提案、転換率50% |
厳密には「受注件数」が指標、「20件」が目標値です。実務では両方を合わせて「KGIは月20件」と表現することもあります。何を目指すか自体が曖昧なら、先に目標の決め方を整理しましょう。
KPIとKGIの関係
設計はKGIから逆算しますが、仕事の流れは「行動や過程の変化 → 成果」です。営業なら「問い合わせ → 有効商談 → 提案 → 受注」と並べ、どこが受注数を左右するかを考えます。要因を枝分かれさせて整理したものは、KPIツリーと呼ばれます。
たとえば受注数は、対象をそろえれば「提案案件数 × 提案から受注への転換率」で分解できます。40案件に提案し、半分が受注になれば20件です。ただし、今月の提案が来月以降に受注する仕事で、今月の提案数と今月の受注数をそのまま割ってはいけません。
数式は件数の関係を整理する道具であり、提案を増やせば必ず受注が増える証明ではありません。顧客の適合度や提案品質、結果が出るまでの時間も確かめます。会社のKPIである売上が、営業チームではKGIになるように、指標の役割は管理する範囲によって変わります。
KPI・KGIの具体例
以下の数値は設定方法を示す架空例です。業界の標準値や推奨値ではありません。
| 業務 | KGIと目標値 | 成果を左右する要因・KPI候補 | 併せて確認すること |
|---|---|---|---|
| 営業 | 問い合わせ経由の月間受注20件 | 有効商談数、提案数、提案から受注への転換率 | 値引きによる利益低下、受注までの日数 |
| 申請業務の改善 | 翌月末までに、受付から通知までの平均日数を5営業日から3営業日へ短縮 | 内容確認の待ち時間、初回確認での差し戻し率 | 確認漏れ、長期間滞留している案件 |
| Webサイト | 月間の有効問い合わせ30件 | 対象サービスページの訪問数、訪問から有効問い合わせへの転換率 | 営業対象外・重複の問い合わせ、集客費用 |
業務改善で「処理件数」だけを追うと、難しい案件を後回しにして平均日数を下げる可能性があります。WebでもPVが増えたことだけでは、問い合わせにつながったとは判断できません。成果の量と、質や取り残した案件を一緒に見ます。
KGIからKPIを設定する手順
1.最終成果と対象・期限を決める
「営業を強化する」ではなく、「翌月の問い合わせ経由の受注を20件にする」と書きます。受注の計上日、対象商品、キャンセルの扱いも決めます。件数を増やして利益を失わないよう、最低限守る利益や品質の条件も添えます。
2.成果を左右する要因を分解する
受注までの工程を書き、過去の件数・転換率・待ち時間を確認します。有効商談は、対象顧客の条件に合い、具体的な要望を確認できた商談など、自社で判定条件を決めます。架空の営業チームで、有効商談40件、提案30件、その提案群からの受注12件だったなら、提案移行率は75%、受注転換率は40%です。
同じ転換率のまま20件を目指すなら、提案は50件、有効商談は約67件が必要になります。一方、提案40件で受注20件を目指すなら、受注転換率50%が必要です。どちらも計算上の案なので、人員や案件の質を踏まえて実現可能性を確認します。
3.自分たちが働きかけられる要因を選ぶ
今の問題が提案の遅れなら提案数、提案しても選ばれないなら転換率を重視します。顧客の決定を直接操作はできませんが、要望の確認や提案内容は変えられます。行動でどう働きかけるか説明できるものを選びましょう。
「提案数」は指標、「提案資料の確認手順を変える」は施策です。測る数字と実際に行う変更を分けると、未達の際に何を見直すかが明確になります。
4.数値だけでなく測定方法も決める
担当者によって数え方が変わらないよう、次のように定義します。
| 記録する項目 | 営業の記入例 |
|---|---|
| KPI・目標値 | 月間提案案件数40件 |
| 数え方 | 正式な見積・提案を提出した案件。同じ案件の再提出は重複計上しない |
| データ・担当・頻度 | 案件管理表/営業リーダー/毎週確認 |
| 未達時の確認 | 提案待ち案件の数、待ち時間、止まった理由を確認する |
転換率には分子・分母と対象期間も必要です。結果が確定した同じ提案群で集計し、未決案件は別表示にします。データがなければ、まず現状を測る期間を置きます。根拠のない目標値を確定したり、未測定を0と扱ったりしないことが大切です。
5.KGIとの関係を定期的に確認する
週次では提案の進み具合、月次では受注件数、結果が確定した提案群では転換率を確認する、というように業務の時間差に合わせます。KPIは改善したのにKGIが動かない場合、成果が出るまでの期間、対象顧客の変化、別の制約を調べます。
良いKPIの条件
- KGIとのつながりを説明できる:「なぜこの数字が変わると成果に近づくのか」を工程や記録から説明できる。相関があるだけで原因と断定しない。
- 行動を選べる:悪化したとき、担当者が確認・変更できることがある。
- 同じ方法で継続して測れる:対象、単位、集計条件をそろえ、測定負担が大きすぎない。
- 重要なものに絞る:会議で確認して次の判断に使う指標を選ぶ。記録している数字をすべてKPIにしない。
- 数字だけを良くしても成果を損なわない:提案数を増やすための粗い提案や、受注率を上げるための過度な値引きを見逃さない。
候補ごとに「何の成果につながるか」「悪化したら何を確認するか」「何を犠牲にし得るか」を一文で書けるか試すと、採用の妥当性を判断しやすくなります。
KPI設定でよくある失敗
測りやすい数字だけを選ぶ。受注が目的なのに、送信メール数だけをKPIにすると、見込みの薄い相手への送信で達成できてしまいます。行動量を見る場合も、有効商談など次の工程につながったかを確認します。
KPIを増やしすぎる。確認するだけで会議が終わり、変更する行動が決まりません。KGIへの影響と、今の制約に照らして絞ります。
達成自体が目的になる。難しい案件を除外して転換率を上げても、受注総数が減れば目的を外しています。率だけでなく母数と件数も見ましょう。
一度決めた指標を見直さない。顧客層や営業方法が変われば、成果との関係も変わり得ます。見直し理由と変更日を残し、定義が違う数字を同じ条件として比較しないようにします。
なお、OKRはObjective(目標)とKey Results(主要な結果)を組み合わせる目標管理の枠組みです。KPIは管理する指標なので、同じ種類の言葉ではありません。同じ指標をKRにも使えますが、呼び方を変えるだけで適切な目標になるわけではありません。
KPIが悪いときに最初に確認すること
まず計測漏れや集計条件の変更を確認します。そのうえで「もっと頑張る」と決める前に、次の三つを分けます。
| 問題の候補 | 確認する事実 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 行動不足 | 必要な対象案件があり、着手可能なのに提案していないか | 担当・期限・着手順を決める |
| プロセスの問題 | 見積承認や情報待ちで提案が止まっていないか | 滞留箇所と理由を調べ、手順や分担を変える |
| KPI・目標値の問題 | 提案数は増えても有効商談や受注が増えないか。必要件数が処理能力を超えていないか | 指標とのつながりや目標の前提を見直す |
工程の制約が疑われる場合は、ボトルネックの見つけ方に沿って、入ってくる件数、完了件数、未処理数、待ち時間を確認します。指標が悪いことは原因の確定ではありません。変更後も同じ条件で測り、全体の成果と品質が良くなったかを確かめる進め方は、改善の手順も参考になります。
まとめ
KGIを決めたら、成果までの工程と要因を分解し、働きかけられる重要な要因をKPIにします。指標名と目標値だけでなく、数え方、担当、確認頻度、未達時の確認事項まで決めましょう。
自分の仕事では、まず「最終成果・期限 → 成果を左右する要因 → KPI・目標値 → 測定方法 → 悪化したときに確認すること」の順で書き出してください。数字を達成するためだけの行動になっていないか、KGIと併せて確認することが大切です。
参考:用語と要因分解の考え方は観光庁のマーケティング資料(第5章5-2)、OKRの説明はGoogle re:WorkのOKRガイドを参照。業務例と確認手順は、実務で使うために本記事で整理したものです。
